Q透析膜のドライタイプとウェットタイプの違いについて教えて
A 製造・運搬・保管などの治療領域以外の工程でも違いはあります。
ダイアライザー(透析膜)にはドライタイプとウェットタイプ(モイストタイプ)があります。
基本的には、性質、構造が違うことはありませんが、運搬、保管、操作など取扱いの違いはあります。
※モイストタイプ:中空糸内にのみプライミングされているタイプ。
ウェットタイプ
ダイアライザー内に精製水を充填した状態で滅菌(γ線滅菌、高圧蒸気滅菌など)をするので、その充填液は、基本的に無菌水や滅菌精製水です。
☆ メリット ☆
最初から充填液が封入されているので液漏れなどといった筐体の破損、亀裂といった外観的破損を一目で見分けることができます。
製造段階でダイアライザー内の空気は追い出されているので、空気除去の手間が省けプライミング時間の短縮にもなります。 ドライタイプと比較すると、空気への接触、残留によるデメリットが軽減されます。
☆ デメリット ☆
滅菌精製水なので浸透圧が低いため、十分な洗浄・置換を行わないで血液に触れさせると溶血や凝固を起こさせる可能性があります。
溶血(低浸透圧)
充填液(無菌水、滅菌精製水)の浸透圧は、血液よりも低いため血液に触れると浸透圧が平衡になろうとする力が働きます。 その時、赤血球の中に無菌水が入り込みます。 次第に赤血球が膨れ上がります。最後には膜が破けヘモグロビンが血球外にでてしまい、 赤血球が本来の働きを失い溶血という状態になります。同時に、血球内のカリウム等も漏れ出るため、透析患者のように 腎機能が低下していると蓄積するため危険です。
充填液(無菌水、滅菌精製水)の浸透圧は、血液よりも低いため血液に触れると浸透圧が平衡になろうとする力が働きます。 その時、赤血球の中に無菌水が入り込みます。 次第に赤血球が膨れ上がります。最後には膜が破けヘモグロビンが血球外にでてしまい、 赤血球が本来の働きを失い溶血という状態になります。同時に、血球内のカリウム等も漏れ出るため、透析患者のように 腎機能が低下していると蓄積するため危険です。
また、運搬においては局地(寒冷地)への運搬などには不向きです。長期に保存をすると凍結します。
凍結の際、体積が増えるのでひび割れや破損の可能性があります。
※ (中空糸内も同様に、破損は起こります。)
凍結したものを溶解しても滅菌効果はなく、雑菌も繁殖しやすくなります。
また、飛行機での運搬も気圧の変化によって充填液が膨張し膜を破損することもあります。
ドライタイプ
充填液が封入されていない代わりにグリセリンまたはポリビニルピロリドンという添加剤が中空糸に塗布されています。
☆ メリット ☆
運搬・管理・保存において ウェットタイプより優れています。
充填液がないのでダイアライザーが比較的軽く、持ち運びが楽で、搬送で一度に運べる量も多く、 寒冷地や気圧の変化に左右されることなく使えることです。
今、主流として使われています。
☆ デメリット ☆
ウェットタイプと違いプライミングの際、ダイアライザー内を満たす時間が必要となります。
十分にプライミングを行い、空気を取り除く必要があるからです。
空気除去が不十分だと、中空糸内で空気(気泡、空気層)が邪魔(ブロック)をして血液が通過できなくなったり、 血液が凝固してしまったりします。
そうなると、透析液と接触できず物質の移動ができないので、透析効率が下がります。
最悪の場合は、ダイアライザーを交換する可能性もあります。
どちらのタイプにも、利点、欠点があるため、それらを踏まえた上で使用するのが一番よいと考えます。