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Q  ダイアライザの種類は,どんなのがあるのですか?

(学生 A・M 大阪府)


A  形状,素材,構造,機能,滅菌法によって分類されています。

維持透析を受けられている方々の生命予後を左右する因子として,適切な透析膜を選ぶことはとても重要である。
人それぞれに個人差があり,その方に応じたダイアライザの使用が求められます。人によっては,アレルギーを起こしたりすることもあります。また,老廃物などの毒素の産生量も人それぞれです。 そのため,患者に応じた膜を選ぶ必要があるのです。

形状

ダイアライザーのイラスト ☆中空糸型ダイアライザ☆
現在,透析医療で使用されているダイアライザのほとんどが中空糸型という形状です。
(※右図,中空糸型ダイアライザの一般的形状)

 内径200μm前後,膜厚10~50μm,有効長10~30cm程度のストロー状(中空状)の膜を約1万本束ねて内側に血液,外側に透析液を流れることで血液を浄化します。
 両端部をポリウレタンなどの樹脂で固定しプラスティック製のハウジングと呼ばれるケースに詰めたもの。
中空糸型は,積層型と比較して血液充填量が少ないというメリットがある。


積層型の構造イメージ図 ☆積層型(平板型)ダイアライザ☆
平板状の膜を何重にも重ねて,その間を血液と透析液が膜を隔てて流れることで血液を浄化します。
優れた吸着特性を有しており,尿毒症状を効率よく吸着除去する。また陰性荷電の特性から,炎症性 サイトカインをイオン結合により効率よく除去できるとされています。
中空糸型ダイアライザと比較して,数十枚の透析膜が積層されているが,一枚の透析膜破損による多量の出血や感染 の危険性は高いといえる。
※構造上,中空糸型よりも圧に強く破損の危険性は低い。
また,膜の表面が強い陰性荷電になっているため,ACE阻害薬の使用は禁忌となっています。


コイル型ダイアライザの構造イメージ図 ☆コイル型(現在使用されていない)☆
歴史上,Kolf博士が初めて急性腎不全患者の救命に成功したKolf型人工腎臓が原点である。
中空糸型ダイアライザが登場し汎用されるようになるまでは,維持透析療法創生期の主役といえる形状であった。
血液の充填量が多く,回路内圧の高い状態で使用するため,リークした場合の出血の危険性が高い。

構造

膜厚方向の断面の構造により,均質構造,グラジエント構造,逆グラジエント構造,対称グラジエント構造などに分類されてます。

☆均質構造☆
機械的強度が強い為,膜厚を薄くすることができるため,透析効率の向上を図ることができます。基本的にセルロース系の膜に多い構造です。

☆グラジエント構造☆
グラジエント構造のイラスト 緻密層と支持層の2層構造で構成されており,血液側に緻密層,透析液側に支持層となっています。溶質の透過抵抗が小さいため,高い溶質除去能と透水性を有している。




☆逆グラジエント構造☆
逆グラジエント構造のイラスト グラジエント構造の逆の構成になっており,血液側に支持層,透析液側に緻密層の構成になっている。溶質の透過抵抗は小さいが,目詰まりが多いのが特徴。




☆対称グラジエント構造☆
対称グラジエント構造のイラスト 血液側に緻密層,中心部に支持層,透析液側に緻密層と3層の構造になっている。PEPA膜などに一部採用されている膜構造。





素材

☆セルロース系☆
原料は天然素材のCottonを用いており,再生セルロース,表面改質,酢酸セルロースなどがある。
合成高分子膜が使用できない患者などに用いられる。


☆合成高分子系☆
人工的に生成した化合物にて作製する。
剛席高分子膜はセルロース膜と比較して膜の機械的強度がが低いため,膜厚を20μm~50μm程度と厚めになっている。
一般的に,尿素などの低分子量物質の透過性はセルロース系膜と同等か若干劣るといわれているが,各製造メーカーの工夫がなされている。

機能

Ⅰ型Ⅱ型透析膜に関しては,β2-ミクログロブリンのクリアランスとふるい係数によって分類される。

☆Ⅰ型(Ⅰ-a型,Ⅰ-b型)☆
β2-ミクログロブリン:70mL/min以下,ふるい係数:0.03以下

☆Ⅱ型(Ⅱ-a型,Ⅱ-b型)☆
β2-ミクログロブリン:70mL/min以上,ふるい係数:0.03以下

☆S型☆
特別な機能を持つものと定義される。
PMMA膜などが分類される。

※診療報酬上の血液透析器の機能区分との違いに注意して下さい。

滅菌法

各社製造によりダイアライザの素材,構造などによって滅菌方法を変えている。それぞれ特徴ある滅菌法である。
☆高圧蒸気滅菌☆
高圧,高温の環境下で水蒸気を利用し,微生物を死滅させる。

☆エチレンオキサイドガス滅菌☆
エチレンオキサイドのアルキル化作用による微生物細胞内の化学的構造変化により,代謝,増殖を抑制,不活化させることで滅菌する方法。
滅菌後のガスの残留は人体にとって有害なため,十分な洗浄(エアレーション)が必要となる。

☆γ(ガンマ)線滅菌☆
滅菌力が強く,一度の大量の滅菌が可能である。照射量によって,素材に悪影響を及ぼすことが知られている。



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