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Q  術後,内シャントの発育が悪いのですが効果的な運動やリハビリはないですか?

(看護師  H.Nさん 長野県)

A  術後だけでなく術前から運動をして準備する必要があると考えられる。

          内シャントの術直後管理では,侵襲が強いため安静にする必要があります。

効果的なリハビリは,ゴムボールの握り運動やグリップハンドなどの手の運動が一般的と云われています。特に特別の運動や過度な運動は必要ありません。
血管の血流量や血管にかかる圧を増加させることが,シャントの発達を促すことができます。

シャント肢の上部を軽く駆血し,シャントをうっ血させて加圧させる方法もありますが,もともとシャントが発達しにくい患者は血管が荒廃しやすく点状出血を起こしやすいためオススメしません。 また痛み等も伴うため,患者個人でさせることは不適当でしょう。
※点状出血:あちこちの毛細血管が破れ皮下に微小出血を起こし,それが点状となって現れる現象。

■■シャントの発達が悪い理由■■
内シャントの表在静脈が十分に発達しないのは,上腕動脈の血流不足か吻合部術が適切に行われなかったか,動脈または静脈の血管傷害や動脈硬化による拡張不能などによる。

また,内シャントから出る静脈の側枝に原因がある場合もある。(細い静脈が無数にある)これは静脈の側枝が増加した血流を流し出し,主幹となる静脈の発達を促す内シャントの圧上昇を低下させてしまうため発育が悪いことがある。この場合は,側枝を結紮すると内シャントは発達する場合がある。

透析患者のシャント肢に多くの制約があるが,同時に医師,看護師,臨床工学技士などの医療従事者側も十分に気をつけなければならない。透析中,透析用チューブや留置針接続部がシャント上にのってしまっている場合や,テープ固定などで押し付けていることが原因になることがあります。 例えテープ固定をΩ状にしていたとしても,布団やタオルなどを載せるだけでも,時と場合によっては大きな負担になります。

■■流体力学からみたリスク■■

圧迫などにより血管径が半分(1/2)になれば,血管の血流量は(1/16)まで低下する。(図:ポアズイユの式参照)
ポアズイユの式とイメージ図


※本来は,血圧などを上昇させて代償させることで血流を維持するが,血圧の低い患者では注意が必要となる。
血管を圧迫することがシャントにとっては極めて大きな負担となることがわかると思います。
痛みや血圧低下による血管の収縮も同様の現象が起きます。

血液流量が減ることは,血管にかかる圧力も下がりシャント閉塞や狭窄の原因になるのが分かります。
※血管が細くなることでシグマ効果により血液の流れやすくなるため,厳密に(1/16)にはならない。


■■アプローチの失敗や留置位置も大きな発達障害の原因■■
穿刺には大きな痛みを伴います。血管は精神状態や痛み,温度などの様々な刺激により血管は収縮,弛緩します。
またシャント血流量の少ない患者に過度の脱血は,閉塞の原因になります。

■■見かけ上の血圧に注意■■
透析除水中の血圧に注意しなければならない。血圧に変化がない場合は,過剰な体液を取り除いているだけでなく,血圧維持のための代償作用が働いていることに注意する。
透析後半の血圧の値は,血管の収縮や心臓の代償作用によって維持されていることがあるからです。 特にドライウェイト近くでの除水には注意が必要です。

血圧低下(血管の収縮や血流量の低下)はシャント狭窄や閉塞の原因となるからです。



■■動脈硬化■■
透析患者が脂肪の値が低いのにどうして動脈硬化になるのか,それは運動しないために血管の中腔が細くなってしまうことが原因。

■■透析患者自身のコンプライアンス■■
外来患者,入院患者に限らずシャント管理と発達には医療従事者と教育をうけた患者とで成り立たなければならない。
シャントの運動をするという各患者本人の主観的意見が,それぞれ異なる場合があり,コンプライアンスの違いに注意する。
本人の主張だけに捉われず,医療従事者や家族も含め積極的に参加することが大事といえる。

高齢者の方だと,2,3日何もせずに寝込むだけで身体の筋肉は弱くなり,関節が思うように動かなくなるほか循環器の働きが衰える。
安静による筋肉の低下は,1週間で20%,2週間で40%,3週間で60%にも及ぶ。





    一番の効果的なリハビリは,無理せず継続的に続けることではないでしょうか。

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