トップ  >  疑問Q&Aトピック  >  透析業務  >  透析後半で起こる血圧変動

Q  透析後半時に起こる血圧が上昇する患者さんいるのはなぜですか?

(看護師 H.Nさん 長野県)


A  血圧=心拍出量×末梢血管抵抗により依存するが,様々な成因により高血圧が起こる。

透析中の除水経過に従い,循環血漿量が少なくなり血圧が低下する場合が多い。
その場合の主な理由は,循環血漿量の低下による心拍出量であると云われています。
また,一般的な透析液には酢酸が含有されているが,その酢酸には心機能抑制作用と血管拡張作用を有しているため,体内に入った酢酸を代謝する速度が追い付かずに蓄積する事で低血圧を来す場合がある。

それにも関らず,高血圧を呈している場合がある。
高血圧について主に下記のような状況で起こることが多いとされてます。

■高血圧を誘発させる原因■
①  体液・透析液濃度の格差(高濃度)
     ※一般的な透析濃度は,多人数での基準値であり,個々に調節された濃度によるものではないことに留意。

②  監視装置の密閉系,または除水ポンプなどの異常(逆濾過・除水されていない)

③  透析による血中カリウムの低下や体液量の減少がレニン・アンギオテンシン系を刺激する。
     ※体液欠乏時にレニン・アンジオテンシン系や交感神経の活性の亢進が賦活される。

④  透析によるイオン化カルシウムの上昇が,心筋収縮力や血管壁の緊張を高める。

⑤  除水に対する反応として過度のα交感神経の亢進

⑥  除水による血液濃縮による血液粘度が上昇する。(血管抵抗値の上昇)

⑦  除水により貧血が改善され,低酸素血症が改善され拡張していた血管が収縮する。

⑧  透析液温度の低下,または室温が低い。

⑨  精神的要因(不眠・イライラ)

[補足]
障害腎に起因した求心性のシグナルによって交感神経系の活動も亢進している。この交感神経活動の亢進も高血圧の成因に重要な役割を果たしている。血中エンドセリンも上昇しており,血圧の上昇に相関している。



などの理由により,血圧が上がる原因が多数あることが言える。

特に透析後半に血圧が上昇する場合はレニン・アンジオテンシン系の影響やイオン化カルシウムの影響,除水によるα交感神経の亢進の影響等が考えられる。



糖尿病性透析患者の場合では,心血管系の反応性が悪い場合があり,血圧の変動が特に激しいことがある。血圧の低下時では,シャントの閉塞や血栓の発生の危険性があります。
また透析中低血圧で下肢挙上をする場合は,下肢動脈虚血を起こし下肢病変を悪化させる場合があるため注意して下さい。



透析時の血圧変動の際は,適切に医師の指示を確認し,適切に処置をする必要があります。上記の内容は,施設,医師の診断によるものではありません。医療行為や診断等を助長するためではない事に留意して下さい。
戻る
Q&Aトピックス一覧に戻る