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Q  透析後半時に血圧が上昇する人はどうすればいいです?(レニン編)

( 一般 Y.Kさん 神川県 )


A  あるきっかけで,過度に血圧が上がるのは生体自身が昇圧させているから

【治療の原則】
    【その1】過剰体液貯留に対する治療
    【その2】降圧剤の使用  ( 今回はこれの説明 )

高血圧は一般的に,「容量依存型(体液量依存型)」と「レニン依存型」の2つに大別される。

容量依存型(体液量依存型)」では,体水分量の過剰摂取もしくはナトリウムの過剰摂取により 血管内容量が多くなり(循環血液量が多くなり)血圧が上昇します。血液内のナトリウムが多い場合 では生体がナトリウムバランスを取ろうと水分を取ろうとします。人の腎臓はナトリウムを保持し ようとして,排泄はなかなかできないのです。

レニン依存型」では,除水や透析(血液の是正)などの何かによって引き金となり生体が過 剰に反応している結果からレニンアンジオテンシン系などの昇圧系が亢進し,結果として高血圧が現れている可能性があります。
※高血圧には交感神経能亢進などの理由も挙げられる。
腎不全患者の約60%以上の方が高血圧を合併症としている。 心血管だけでなく他臓器の保護目的としても血圧の維持は重要である。
なお,透析によるイオン化カルシウムの上昇によって,心筋収縮力や血管壁を緊張させて血圧を上昇することがあります。 また血液濃縮によって血液粘稠度が上昇して血圧が上昇することもあります。 これは,ヘマトクリット値だけが粘度を決定していなく血球数,血漿成分などによっても差異はありますので注意して下さい。 高血圧の成因は多くため,レニンアンジオテンシン系についてのみ記述しています。


(重要)現在,服薬している薬を見直してみる必要があるかもしれません。

その降圧剤のタイプによって降圧機序が違うからです。利尿系降圧薬は腎機能が完全に廃絶された場合では効果が期待できません。 よく惰性のまま投薬されている方がいますが・・・・(※残腎機能がある場合などでは積極的に排尿しないと尿路感染症になってしまう可能性もあります。)

生体には血圧を上昇させるレニン-アンジオテンシン系といわれる機構があります。(図1参照)

レニン依存型はこちらに関係しており,何が引き金になるかわかりませんが,これらの経路が亢進する ことで血圧が上昇します。

原因として,蛋白分解酵素の一つであるレニンの過剰分泌があると云われています。

例えば,除水によって適性体重まで戻った場合,血液内の水分は減少するので循環血液量も同時に減少します。 それは結果として腎臓への流れる血液量も減少します。それに生体が勘違いをして,血液量を維持しようとして 腎臓からレニンを分泌します。
その結果,強力な血管収縮力のある酵素アンジオテンシンⅡが血液中に増加して血圧が上昇するのです。透析後 半中に血圧が過度に上昇する場合は疑う必要があるのかもしれません。



この場合は,図2のように薬によってレニンアンジオテンシン系の阻害や拮抗することで有効に血圧を下げるこ とができるかもしれません。

どんな薬があるのか下記にて紹介します。

薬の種類によってレニンアンジオテンシン系経路のどこで作用するか分かれています。

☆☆(直接的)レニン阻害薬☆☆

レニン-アンジオテンシン系の最初の段階で作用するレニンを阻害する。(図2内の上)

☆☆アンジオテンシン交換酵素阻害薬(ACE-I)☆☆

アンジオテンシン交換酵素を阻害してアンジオテンシンⅡの産生を抑えることで昇圧効果を抑える。(図内の中)

☆☆アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)☆☆

アンジオテンシンⅡ受容体に結合してアンジオテンシンⅡの作用を阻害する。(図内の下)
それ以外に血圧を上げる因子として動脈硬化の進行により弾力が低下(常時血圧も上昇する傾向にある。) や除水に対してα交感神経の亢進などもあることに注意して下さい。なお,糖尿病患者の場合では神経障害によって血管に関する症状が起こりやすい。

レニン-アンジオテンシン系経路
図1
レニン-アンジオテンシン系経路阻害ポイント
図2
※服薬に関しては必ず医師と相談して下さい。

降圧剤の種類について

☆★カルシウム拮抗薬(CCB)★☆
血管平滑筋細胞内へのカルシウム流入を抑制し血管拡張させる。
グレープフルーツジュースと一緒に飲むと薬の作用が増強され,頭痛や吐き気などの症状が現れることがあります。またカルシウム拮抗薬には特異的な副作用として歯肉肥厚や女性化乳房が知られている。


☆★アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)★☆
アンジオテンシンⅡ受容体に結合してアンジオテンシンⅡの作用を阻害

☆★アンジオテンシン交換酵素阻害薬(ACE-I)★☆
アンジオテンシン交換酵素を阻害してアンジオテンシンⅡの産生を抑えることで昇圧効果を抑える。
ACE阻害薬と消炎・鎮痛・解熱剤との併用により降圧作用が弱められることがありますので服薬時には注意しましょう。詳しくは薬剤師さんなどに相談してみましょう。

☆★(直接的)レニン阻害薬★☆
レニン-アンジオテンシン系の最初の段階で作用するレニンを阻害

☆★選択的アルドステロン受容体拮抗薬★☆
アルドステロン(水分を貯留を促すホルモン)の作用を選択的に阻害する。
※腎不全には禁忌!!

☆★利尿薬★☆
腎臓から水およびナトリウムの排泄を促し循環血液量を減少させ血圧を下げる薬
※腎機能に依存する。

☆★α遮断薬★☆
血管平滑筋のα受容体を遮断し血管抵抗を下げることで血圧を下げる。

☆★β遮断薬★☆
心拍出量を低下させることで血圧を下げる。



こ当サイトの経験談…高血圧のある患者さんにカルシウム拮抗薬を服用してもらったのですが,あえって血圧が高値になって頭痛や吐き気の症状が現れた経験があります。
個人によっては,ある種の薬と合わない場合や効果があまりない場合があります。
反面,同じような薬理機序でも薬の種類(商品)を変えるだけで効果が表れる場合もあります。


高血圧で悩んでいる人は医師に薬のことで相談してみるといいかもしれません。(※いきなり相談するのが難しい人や気が引ける場合は薬剤師さんに声をかけてみるのも一つです。)

今服薬している薬を知ることは重要です。
何よりも自分自身の体にとってとても重要なことです。



透析患者の場合,降圧薬の投与前(変更相談の前)に塩分や水分の管理を行い適正体重(ドライウェイト)の維持をしましょう。
どうしても透析者の場合では水分管理に目が向いてしまうためだと思います。それでも透析(除水など)で維持ができてしまうという結果があります。

降圧剤の処方は,降圧目的とともに,腎・心臓などの臓器保護を目的として投与する場合があります。
※なお薬は服用は食事の有無に関係なく規則正しく決められた時間に服用することが大事です。
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