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Q 透析後半に攣りを起こすことがあります。その時の装置側の操作はどうすればいいですか??


A  腹部や下肢などの筋肉が硬直して起こる筋肉痙攣の原因は,はっきりと分かっていない。

従って,透析監視装置側の操作は症例によって異なるが,非生理的環境から遠ざけることが重要である。
※参考する論文や文献によって異なる。

筋肉痙攣では,4大要因として下記の4つが挙げられる。
①  低血圧
②  除水による循環血液量の減少 (ドライウェイト以下の患者
③  除水速度の過多 (体重増加過多)
④  低ナトリウム透析液の使用

筋肉痙攣は,特に除水量が多い時やドライウェイトが適正でない場合にみられ,また低血圧も伴って起こることも多い。

上記の4大要因はいずれも血管収縮を来しやすく,それによる局所の循環不全によって筋肉への血液灌流量低下を招き,相対的なナトリウムやカルシウム欠乏によって二次的な筋肉弛緩障害も引き起こすとも云われる。
※※補足1※※
それ以外にも,透析前に低カルシウム血症の患者では急速なアシドーシスの補正に伴うイオン化カルシウム値の低下によって,透析後半にかけて痙攣が起きやすくなる。


しかし,血圧が回復しても痙攣が続くことがしばしばある。
筋肉痙攣の頻度は,総除水量が多ければ多いほど対数的に多くなり,除水による体重減少が2%,4%,6%と上がれば,痙攣の頻度は,2%,26%,49%と増加する。

補足2:
近年,糖尿病性腎不全の増加に伴い,糖尿病性ASO(閉塞性動脈硬化症)が原因と考えられる筋肉痙攣がある。
糖尿病性腎不全で透析時に頻回に下肢の筋肉痙攣があり,同一性に出現する場合は,足背動脈の触知の有無や左右差,冷感なども確認する必要がある。
低血圧時に下肢を上げることは,血液灌流量を増加させ血圧低下を予防することに効果はあるが,疾患によっては下肢動脈の狭窄や閉塞などを招く恐れがある。

また下肢の血流を低下させることによる循環不全を起こし,筋肉痙攣を引き起こすことになる。

当サイトの考察として・・・・・・
軽度の低血圧を伴う下肢有痛性筋痙攣を呈した場合の透析監視装置の操作

①ECUM(限外濾過)

透析に伴う溶質除去は血漿浸透圧減少による細胞外液を細胞内への移行を招き,体外への除水量以上に血漿量が減少する事がある。(低血圧を増悪させる可能性がある)
しかし,ECUMによる除水は等浸透圧性であるため,血漿から細胞内へ水分が移行しない。そのため,血漿量の減少,心拍出量の減少が小さく血圧の低下もしにくい。
もしくは,透析一時停止(除水も停止)


①-Ⅱ/除水速度は限りなく下げる。もしくは停止する。

①-Ⅲ/透析時間などの状況によるが中止することも考慮する。

有痛性筋肉痙攣は強い痛みを伴い,恐怖から筋肉痙攣の徴候が現れると過呼吸傾向になり,血液pHの上昇,二次的なイオン化カルシウムの減少となり増悪の可能性が考えられる。
また,本人の透析へのコンプライアンスも考慮し,できるだけ精神的負担を下げる。


②設定血液流量を下げる

(脱血と返血は同じであり変わらないという議論されるが,非生理的環境をできるだけ遠ざけること)
※※シャント(ブラッドアクセス)自体が非生理的であることに留意


③透析温度の変更はしない


以上を,同時に操作して非生理的環境へ遠ざけることがベターだと考えます


※医療上,医師の指示の下で透析監視装置を操作する事ができます。
そのため,上記すべては医師の指示を必要とする医療装置操作に含まれます。

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